当院の道のり

 私共は2005年10月に有床診療所「あいち肝胆膵消化器クリニック」として開院し、2014年8月に現在の「あいち肝胆膵ホスピタル」、すなわち病院になりました。
このような変わった名前の病院はほかにはありませんので奇異な感じを受ける方もみえましょう。最初にこの経由について少し説明させていただきます。


自身のライフワークである肝臓癌の肝切除を中心とした治療をはじめ長年携わってきた肝胆膵領域の癌治療を、
自分が想ってきた診療を行いたいと強く思いました。

 
 私(院長)は名古屋医学部第二外科(現消化器外科2)在局中の1979年に肝臓癌に対する肝切除を当地方で初めて本格的に取り組み、1987年まで肝癌治療を中心に肝胆膵領域の外科的治療に長年関わりました。その後赴任した病院で17年間で肝胆膵領域の病気だけではなく、胃・大腸癌など多く消化器癌の治療経験ができました。
 また大学病院時代と異なって大変数多くの患者さんと出会い、良性の病気で短期間のお付き合いもあれば、癌の患者さんで最初から最後まで長く関わることもできました。このような経験の中で、世界に誇る国民皆保険制度に守られた日本の高度先進的医療の中でも、必ずしも患者さんが期待する病院での診療行為が行われていないことも見てきました。少子高齢化もあって医療費増多に対する国の厳しい医療費抑制政策の中での医療制度で、病院は院内の再整備や患者さん・社会の要望などへの対応を迫られ、その結果は医師をはじめとする医療従事者に負担がかかり、医療経営的にも大きな負荷がかかります。そのような中で多数の外来・入院患者さんに十分な時間をかけて診療を継続することは困難を極めますが、これは現在の日本の医療の縮図であり、簡単に解決することではないと考えます。

 私は前病院の院長を退任するにあたって、自身のライフワークである肝臓癌の肝切除を中心とした諸治療をはじめ長年携わってきた肝胆膵領域の癌治療を、自分が想ってきた診療を行いたいと強く思いました。患者さんと時間をかけてよく話し、患者さんが余裕をもって考えて受け入れられる医療を行いたいと思いました。そのためには診断から、入院して行う検査や治療、手術を行うことが必要であり、病室を持つ「病院」とする必要がありました。僅かな自己資金をすべて供出し、私の「夢の病院」の設立に賛同してご寄付頂いた数多くの方々の資金のお蔭をもちまして設立の準備ができ、約1年間の準備と設計・建設の後に、2005年10月に消化器の中でも肝臓、胆のう・胆管ならびに膵臓の癌を中心とした各種の病気の診断や治療を専門的に行う新しいタイプの医療施設「あいち肝胆膵消化器クリニック」として、19床の有床診療所で開院しました。


肝胆膵に特化した、日本で最初の病院「あいち肝胆膵ホスピタル」の開設

 当初より「病院」として開設することを目指しておりましたが、当院が所属する尾張東二次医療圏には二つの大学病院と二つの公的大病院があり、当時すでに許可病床を1350床過剰しているということから、愛知県ならびに厚生労働省からの病院設立許可が得られませんでした。開院後も肝胆膵領域の癌を主とする診療実績を提示するとともに、周囲の医師会の先生方から病院化へのご推薦も頂いて申請を続けて参りました。その成果や多くの方々の多大なご支援もありまして、2014年7月1日に許可病床30床の病院「あいち肝胆膵ホスピタル」として生まれ変わりました。
 肝臓癌をはじめとして胆道や膵臓などの病気は、消化器病の中で最も専門的な診断能力や治療に際しての知識と技術、さらに高度な手術手技が求められる分野です。肝胆膵疾患を対象として診療する専門的な医療施設は、大学や癌センターなどの部門としてはありますが、この分野のみを診療の対象とする専門施設はなく、「肝胆膵」という文字を施設名の中に標榜できたのは日本で最初であり、また唯一無二です。

 当院は肝・胆・膵の癌を主とする疾患の診断と各種の治療に長年携わって参りました。私は癌の切除、や肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術、閉塞性黄疸に対する 経皮経肝的胆道ドレナージやステント留置など外科的治療、外科的な立場を中心に行ってきています。副院長の堀口医師は前任の藤田保健衛生大学病院の消化器内科教授、日本胆道学会理事長というこの領域で日本の頂点にありました。胆膵疾患に対する逆行性膵胆管造影ER-CPや乳頭切開術後の胆道ステント留置に関しては日本の草分け的存在であり、専門の慢性膵炎や、B/C型慢性肝炎に対する薬剤療法、肝細胞癌に対するラジオ波焼灼術も多数行ってきました。
 これらの豊富な知識や技術、経験を有した信頼できる医師が自らの専門分野に専念して、これらの病気で悩んでおられる患者さんに対して高度医療器機を駆使しながら質の高い専門的な手術などの治療を提供して皆様から高い評価を受けて参りました。地域の先生方からの多くのご紹介に加えて、愛知県内広域の患者さん方からもその診療内容や対応に関して高い評価を頂いて参りました。 これまでの集計で、初診患者さんの42%は登録医をはじめ周囲の内科・外科の先生方からご紹介を頂いたもので、初診患者さんの24%が当院で治療を行った患者さんのご紹介であることや、大学病院や大病院において治療中の患者さんがセカンド・オピニオンを受けにこられることが大変多いことも皆様からの当院に対する高い評価の現れと自負しております。

 私共の診療における心構えとして、患者さんの詳細なデータの提示、説明を行った上で、患者さんのご希望も配慮した治療方針の提示と公平な治療法の選択を行うようにしております。受診された患者さんに臓器の正常な解剖と生理・機能(役割)をまずお話しし、患者さん自身に対して行った検査結果(画像診断や血液検査)をコンピュータ―画面で示して診断根拠を説明しますと、他施設から来られた患者さんのほとんどはこんなに写真(画像)を見せてもらいながら説明されたのは初めて、と言われます。また一旦治療など提供した患者さんに対しては患者さんのご希望がある限り最後までお付き合いをさせて頂くことを基本姿勢としております。

 2017年4月に開催した当院の登録医の先生方との定期的な病診連携懇談会(第17回)でも開院後11年半の診療実績を報告させていただきました。肝臓癌、胆のう・胆管がん・膵癌など疾患別の治療経験数は、肝細胞癌330例、胆管細胞癌25例、転移性肝癌180例、胆のう癌45例、胆管癌65例、膵癌155例、胃癌200例、大腸癌310例などです。いずれも歴史ある大学病院、がんセンター、大病院の数にははるかに及びませんが、対ベッド数から見ると相当大きな数字となります。肝細胞癌に対する最も根治的な治療法は肝切除ですが、肝機能の状態や存在場所、数などからその適応から外れる場合も状況を見ながら肝動脈栓塞術やラジオ波焼灼術,エタノール注入療法などを必要に応じて繰り返すことによって長期生存を得ている患者さんは多数あります。 
 胆膵の黄疸症例に対しても切除不能とされて受診された方の多くに対して 経皮的ないしは内視鏡的に胆道ステントを留置して黄疸をとって抗がん剤による全身化学療法を行って2年以上の長期に至る患者さんも沢山みます。このような実績は、手術で切除しても癌に対する確実な追跡を行い、切除できない場合はどうしたらその患者さんにとって良い予後、良い生活ができるかということを常々考え工夫する知識と、これを実践する手技を有しているからできるものです。


いかなる立場の患者さんも人間として同じ目線で対応し、時間をかけて説明し、ゆっくりとお話しし合って、
患者さん側と医療側が十分に納得できる医療を目指して…


 近年医療の進歩は著しく、数年ごとに新しい発想の基に目覚ましい診療の改革がなされてきています。外科的には肝臓移植を主とする移植外科腹腔鏡など鏡視下手術の発展やその手技の開腹手術への還元がありますし、内科的には遺伝子組み換え科学の進歩による分子標的治療薬(抗がん剤)やC型肝炎に対する抗ウィルス剤の開発があります。このような様々な医療内容の進歩は多くの患者さんの治療に関して先進医療を行える大学病院、がんセンターの役割は重大です。施設の規模、資金からの先進医療機器の配備、有能な知力の集結などがあり、日本の将来の医療を導いていただく必要があります。
 他方実際の臨床面では、癌など長期継続を必要とする患者さんにとって大病院では多忙さを理由に話をよく説明してもらえなかったり聞いてもらえなかったり、医療側が行いたいという治療法を選択できなかったりすると興味をなくして他に紹介するなど、個々の患者さんにとっては必ずしも環境の良い場所とは言えないようです。過去9年間に私共にセカンド・オピニオン紹介ないし受診された患者さんは140人以上ありますが、その約半数は500床以上の病院から来られた患者さんで、その半数以上は説明、対応面の不満によるものでした。

 私どもはいかなる立場の患者さんも人間同士として同じ目線で対応し、時間をかけて説明し、ゆっくりとお話しし合って、患者さん側と医療側が十分に納得できる医療を目指しています。全職員が同じ考えで診療に当たっています。
 周囲を緑に囲まれた素晴らしい環境のもとで、ゆとりあるスペースの中で、患者さんが満足・安心して診療を受けられるように職員が豊かな感性を持って対応し、今後も最善の結果をもたらし続けることをお約束します。